あの子の隣

11月13日。

昔、あの子を嫌いだった。

いちばん仲が良いような顔をして、毎日隣にいた。いつも一緒だったが、お互いに依存していたわけではない。離れても平気だったし、なによりあの子は、"誰とでも仲良くできるよ"と、茶色い瞳を細めて微笑んでいた。羨ましかった。

誰に嫌われるわけでもなく、疎まれるわけでもなく、器用になんでもこなしていた。私ができることで、あの子にできないことはなかった。負けたくなくて、努力したこともあるが、結局勝てたことはない。たいていの人が少し手を抜くところを、あの子は絶対に抜かなかったからだ。

大人だった。大人にみせていた。しかし私の前では子供だった。わがままで、頑固で、何度もイライラさせられた。まるで私は捌け口にされていた。誰にも見せない顔を、私だけには見せていた。それだから誰にも伝わらない、不合理で、理不尽で、みんながあの子の味方だった。私の友達も、結局はあの子の友達で、私だけのものなんてなかった。でもどうして、嫌うことなんてできなかった。他の人に譲る気なんてなかった。

子どものような奔放さや無邪気さ、譲らないプライドは、たしかな魅力だった。他の人に見せはしないが、私を惹きつけた。振り向かないから、振り向かせたい。手放しで誰のとこへも飛び込んでいける人の、戻ってくる場所でありたいと願った。そうなれない自分と、そうはさせない周りの子たちを、どうしようもなく嫌ったあの頃。出口を見失ったようだった。