時計

11月11日。

 

時間は巻き戻せない。

目が覚めたら、約束の時間をとうに過ぎていて、慌てふためいて早急に連絡をとる。最善策を探すふりをしながら、なんとか冷静を装うが、深い後悔が身体を重たくする。未来に灰色の膜がかかり、心は一度その日を終わらせてしまおうとする。

 

連絡手段は今やなんでもよいが、メッセージを送れば、見届けずとも、伝わったと考えてしまう。お互いの齟齬や、タイムラグに気が付くのは、いつもそのあとの、温度のあるやりとりだ。時間が経てば経つほど、冷めて忘れてしまうようで、そうして不安になっているときほど、何も届いてない。届かなくて初めて、その距離を知る。どうして忘れていられたのか不思議なくらい、私たちはどうしようもなく一人だ。